理学療法士による暇つぶしブログ

筋トレのメカニズムと効率の良いリハビリとは

筋力トレーニング

筋力トレーニング

最大筋力と絶対筋力

最大筋力=絶対筋力 x 筋断面積

ここでの絶対筋力とは筋断面積1m2あたりの筋出力のことです。

筋力強化のメカニズム

筋細胞は蛋白合成・分解を繰り返し行っています。トレーニングすることで筋線維にメカニカルストレスやケミカルストレスなどの刺激を与えることによって筋線維は破壊され、蛋白合成を高めるホルモンを分泌します。

この蛋白合成によって筋原線維が肥大していくのですが、この筋原線維1本がひたすらに肥大していくわけではないのです。

つまり、肥大・分裂・増加を繰り返すことで、束が大きくなっていき、筋線維および筋腹が肥大していくのです。

メカニカルストレス

メカニカルストレスとは筋肉に直接ダメージを与えるような刺激のことです。

例えば、強度の高いウェイトトレーニングや速度の速い運動のことです。

ケミカルストレス

対してケミカルストレスとはホルモンや代謝産物などによる筋肉への内部からの刺激のことです。例えば、加圧トレーニングや速度の遅い運動のことです。トレーニング順序として、メカニカルストレス→ケミカルストレスを加えて鍛えることが望ましいといわれています。

ではだいたいどれくらいの期間、トレーニングを実施しなければならないでしょうか?

トレーニング期間

一般的にいわれているのが、20日目以降とされています。トレーニング開始から20日目まででも筋力は増加するのですが、これは絶対筋力増加による最大筋力増加であり、20日目以降は筋断面積増加による最大筋力増加であるとされています。つまり、20日以上の期間をある原則に従って継続的に実施していかなければならないということになります。

その『原則』とは何でしょうか?

筋力トレーニングの原則

大きく2つに大別されています。

・過負荷 ”Overload” の原則

・特異性 ”Spasticity” の原則

それぞれについてみていきましょう。

過負荷の原則について

トレーニング強度が普段生活している強度よりも強くないといけないという原則のことです。

細かく条件をみていくと、

・強度の条件

・接続時間の条件

・頻度の条件

この3つが過負荷の原則を成立させるための条件となります。

まず、「強度の条件」は60%MVC以上の強度でトレーニングをした方が良いという条件です。「接続時間の条件」は等尺性トレーニングの場合、どれくらいの時間しないけといけないのかという条件のことです。「頻度の条件」は等張性トレーニングの場合、1セットで何回しないといけないのかという条件のことです。

強度の条件は60%MVC以上と分かりましたが、時間や頻度はどの程度すれば良いのでしょうか?

時間と頻度の具体的な数値

表 1 トレーニング強度と接続時間の関係
トレーニング強度(%MVC) 必要な筋収縮時間(秒)
40 – 50 15 – 20
60 – 70 6 – 10
80 – 90 4 – 6
100 2 – 3

 

表 2 トレーニング強度と頻度の関係
 強度(%MVC)  最高反復回数  主な効果
100 1 集中力
90 3 – 4 集中力
80 8 – 10 筋肥大
70 12 – 15 筋肥大
60 15 – 20 筋持久力
50 20 – 30 筋持久力
1/3 50 – 60 筋持久力

これら2つの表を使って、考えていきます。

等尺性トレーニングの場合、60%MVC以上の負荷とは全力で抵抗して6-10秒程度しか耐えられない強さになります。等張性トレーニングの場合、60%MVC以上の負荷とは全力で抵抗して15-20回しか反復できない強さになります。

このようにして負荷量の調節をしていき、個々の患者に見合ったプログラムを提供していきます。

特異性の原則

トレーニング種類が目的とする運動と似たような運動でトレーニングをした方がより強くなるという原則のことです。

こちらも細かく条件をみていくと、

・筋収縮様式

・負荷様式

・動作様式

この3つが特異性の原則を成立させるための条件となります。

まず、「筋収縮様式」は求心性収縮を用いたトレーニングを主に実施すると、求心性収縮時に発揮する筋力が増強され、低速度でトレーニングを行うと、低速時に発揮する筋力が増強されることです。「負荷様式」は最大筋力を増強したいときは100%MVCで、最大速度を増加させたいときは無負荷(最大速度)で実施するとそれぞれの目的に沿った筋力が増強されるということです。

例えて話をすると、陸上競技の短距離選手が下肢の筋力を増強させたいときに高負荷で実施するのではなく、低負荷もしくは無負荷でなおかつ高速度でトレーニングをすると良いことになります。

「動作様式」は歩行時の筋力を増強したければ歩行、もしくは歩行に近い形で筋力トレーニングをした方が良いということ。例えば立ち上がり動作に必要な筋力を増強したければ、立ち上がり動作を用いてトレーニングをするか、もしくはスクワットなど立ち上がり動作と類似した動作でトレーニングをした方が良いということになります。

トレーニングの1日量

全身行うトレーニングを週2回することが理想です。1日に2時間、週2回トレーニングをする方法なのか、毎日するけど30分を部位ごとに分けてその同部位が週2回トレーニングできるようサイクルして行う方法があります。

つまり、ある部位の筋力を強化したい場合、その部位のトレーニングは週2回が一番良いということです。

時間帯と食事前後の関係

トレーニングに最適な時間帯は夕方なります。

夕方は筋肉が一番活性化される時間帯であり、トレーニング効果があるとされています。

また、タイミングとしては空腹でも満腹でもない食後2時間くらいが望ましいとされています。

筋力強化に必要な栄養素

糖質蛋白質が必要な栄養素になります。

一番簡単に上記の栄養素を摂取できる方法として「プロテイン」がありますが、手軽さだけがメリットではなくカロリーを抑えながら蛋白質を摂取できるため、ダイエットにも効果があります。

ゴールデンタイム

筋肉のゴールデンタイムとはトレーニング終了後30分以内の時間のことです。この時間に多くの蛋白質を摂取し、ダメージを受けた筋線維を修復することで筋肥大の割合が変わってきます。

つまり、トレーニングを終了して30分以内に牛乳や持っているのであればホエイプロテインを飲むことでさらに効率よく筋肉をつけることができるということです。

ブリッジトレーニング

私はよくブリッジトレーニングを指導し、筋力強化の一つの方法として重宝しています。

なぜ、ブリッジトレーニングが良いかというと、負荷の調節がしやすく、高齢者の方は大殿筋の筋力低下が際立って多いためです。また、自主トレーニングでも指導しやすく、運動アドヒアランスの向上も期待できます。

ブリッジ動作の負荷量調節として、

両脚ブリッジ→片脚ブリッジ→支持側股関節伸展位での片脚ブリッジ

この順番で負荷は大きくなっています。

また、オプションとして、膝は伸展していけばいくほどハムストリングス有意に、屈曲していけばいくほど大殿筋有意に筋活動が生じます。さらに、前足部を浮上させ踵接地した状態で行うとなお良いとされています。加えて、頭部と上位頚椎を屈曲させ、臍を見るように保持しながらやると、腹直筋などの体幹前面筋群の活動が有意になるため、脊柱起立筋などの代償を抑制することも可能になります。

このように様々なバリエーションがあり、患者個々に見合ったトレーニングを提供できるのです。

過負荷の原則と特異性の原則

海外のThorstenssonら1)の文献を紹介させていただきます。

3人の被験者に各々1種類(合計3種類)の筋力トレーニングを実施し、どの種類の筋力トレーニングが効率的なのかを調べた文献です。
これは垂直跳びの跳躍高を用いて評価しております。

3種類の筋力トレーニングとは・・

① フリージャンプ動作をひたすら繰り返す

② バーベルを持って空気椅子のような姿勢で等尺性収縮

③ バーベルを持ってスクワットトレーニング(ウェイトトレーニング)

結果は垂直跳びと同じフリージャンプを繰り返すことの方が等尺性トレーニングやウェイトトレーニングよりも効果が大きかったのです。つまり、過負荷の原則よりも特異性の原則の方がその動作のパフォーマンスを上げるためには効果的であったのです。

では過負荷の原則に従わずに特異性の原則のみに従ってトレーニングをすれば良いのでしょうか?

過負荷の原則は必要ない?

まず結論から言いますと、過負荷の原則は必要なのです。

上記で示したフリージャンプに下記それぞれのトレーニングを加えていった場合の結果があります。

① フリージャンプのみ

② フリージャンプ+等尺性収縮トレーニング

③ フリージャンプ+ウェイトトレーニング

一番良い結果となった組み合わせはどれだと思いますか?

正解は③

③>②>①の順でした。

つまり、特異性の原則に従ったフリージャンプトレーニングと過負荷の原則に従ったウェイトトレーニングを組み合わせることが一番効率良く筋力を強化させることができるのです。

そのため、臨床場面で歩行の動作を獲得する際には股関節外転筋力や膝関節伸展筋力などを過負荷の原則に従ってトレーニングした後、ステップ動作や歩行動作の繰り返しを行うアプローチが一番効率が良いということです。

オススメ書籍
参考文献

1)Thorstensson A(1976)「Effect of strength training on enzyme activities and fibre characteristics in human skeletal muscle 」, 『Acta Physiol Scand』96, pp.392-398.

2)金子公宥(1993)「パワーアップの原則再考」, 『Jap J Sports Sci』12, pp.160-164.

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