理学療法士による暇つぶしブログ

術後に筋攣縮が生じる生理学的メカニズムについて解説

 

急性期や回復期病棟に勤めていると、手術直後の患者さんのリハビリを担当する機会がとても多いと思います。

その術後患者様の主訴でやはり多いのが疼痛だと思います。

疼痛はリハビリの進行を阻害したり、患者様の意欲を低下させたり様々な悪影響を及ぼしますので、まず疼痛をしっかり除去してあげることが重要になります。

しかしながら、疼痛を除去するには術直後の疼痛の原因を理解しなければなりません。

そこで、今回は術直後に生じる筋攣縮の生理学的メカニズムについて記載していきたいと思います。

筋攣縮の概要

筋スパズム(muscle spasm)とは、筋攣縮とも言われていて、その名の通り筋が攣縮している状態のことです。

また、筋だけでなく血管の攣縮も伴っていると言われています。

生理学的にいうと、筋やその他関節の周りに存在する組織に刺激が加わることで侵害受容器が反応して、脊髄内へ伝わっていきます。

その脊髄内へ伝わった信号は以下の二つのルートに分かれていきます。

  • 脳へ伝わるルート
  • 末梢へ伝わるルート

脳へ伝わるルート

脊髄後角→外側脊髄視床路を上行→視床→大脳体性感覚野へ投射されることで、痛みを認識します。

末梢へ伝わるルート

脊髄反射を形成して、脊髄前角のα運動線維と交感神経に関与する節前線維に作用して筋をはじめ、血管にも攣縮のような状態を引き起こさせます。

このように脊髄反射が強く関連しているのが筋スパズム(筋攣縮)の病態なのです。

図 疼痛と血管および筋スパズム発生機序1)

術後に筋攣縮が生じる原因

手術時、例えば股関節の手術では股関節部の操作をしなければいけません。

そのため、股関節を見やすくするためにその周囲にある軟部組織などを避けたり、場合によっては切開していきます(股関節の場合だと、梨状筋や中殿筋を切開する)。

この切開するときに筋小胞体も同じく侵襲されるため、筋攣縮(筋スパズム)が発生すると考えられます。

筋小胞体とその役割

筋細胞内に存在してカルシウムイオンの貯蔵に特化した小胞体のことをいいます。

筋弛緩する際にカルシウムイオンを筋小胞体が取り込んで、筋収縮するときにカルシウムイオンを放出します。

つまり、カルシウムイオンを貯蔵したり放出したりしますが、特に大事なのは筋弛緩するときにしっかりと取り込めるかどうかということです。

筋小胞体の切開

もうお分かりの通り、筋小胞体はカルシウムイオンを取り込むことで筋弛緩させるので、その筋小胞体が切開して、機能できなくなるとカルシウムイオンを取り込めなくなります。

そのため、筋弛緩ができなくなり、常に筋は収縮している状態、即ち筋攣縮状態に陥るのです。

筋攣縮は圧痛や収縮時痛を認めるので、術後に痛みを誘発してしまい、リハビリの進行を妨げてしまっているのです。

筋攣縮を緩和させる方法

筋攣縮は持続的に収縮してしまっている状態、つまり「力を抜くことができない」状態なので力を抜けるようサポートしてあげるのです。

具体的には反復性等尺性収縮という手技を用います。

筋攣縮の有用な運動療法として林先生ら1)反復性等尺性収縮を提唱しています。

その反復性等尺性収縮とはどのようにするのでしょうか?

反復性等尺性収縮のメカニズム

筋は筋腹が真ん中にあり、両方の端に骨に付着した腱がある構造となっています。

そのため、等尺性収縮をすると筋腹部分は収縮しますが、骨(関節)は動かないためどこかが伸ばされているのです。それはいったいどこでしょうか?

腱と思うかも知れませんが、腱は硬い組織なのでそこまで伸ばされません。

正解は筋腱移行部(MTJ)です。

そのため、等尺性収縮は筋腱移行部を効率よく伸張することができる運動療法の一つなのです。

図 等尺性収縮がもつ機能的特性1)

では筋腱移行部を伸張するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

ゴルジ腱器官の興奮によるIb抑制

筋腱移行部に伸張刺激が加わるとゴルジ腱器官が反応することは知っていると思います。

ただ、ゴルジ腱器官の閾値は割と低いみたいで、軽い伸張刺激でも反応するといわれているみたいです。2)

ゴルジ腱器官の反応によってIb抑制がかかるので、筋の緊張は弛緩していきます。

図 ゴルジ腱器官によるIb抑制について1)

筋ポンプ作用による発痛物質の除去

この筋ポンプ作用というのが筋攣縮による圧痛を取り除いている一番の理由なのかなと個人的には思います。

筋の収縮と弛緩をリズミカルに繰り返すことによって、血液の循環を良くしていくというメカニズムです。

筋が収縮すると血管を圧迫しますが、この圧迫により一時的に血流を遮断します。そして一気に弛緩をして圧迫を解放することにより血液が勢いよく流れていくイメージです。

勢いよく流れることにより血管内に滞っていた痛みを生じさせる物質を取り除いていくのです。

図 筋ポンプ作用による筋内発痛物質の排除1)

このように痛みが出現している筋に対してこれらの手技を利用して、術後の痛みを除去しましょう!

参考文献、引用画像

1)林典雄(2015)『肩関節拘縮の評価と運動療法』, pp.77-84, 運動と医学の出版社.

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