大腿骨頸部骨折と転子部骨折の違いとは?両者の決定的な違いとは?

近年、高齢化に伴い大腿骨骨折の患者様が増加傾向にあります。主に転倒による受傷が多く、下肢の筋力低下が原因といわれています。

大腿骨骨折の種類は様々ありますが、特に多いのが頸部骨折と転子部骨折です。

大腿骨折の治療法は原則的に手術療法ですが、術後のリハビリをしっかりしないと廃用症候群となり、寝たきり、最悪の場合は肺炎を合併して死に至る疾患でもあります。

今回は大腿骨骨折の中でも頻度の高い頸部骨折と転子部骨折のそれぞれの違いについて記載していきたいと思います。

大腿骨近位部骨折の種類とは?

大腿骨近位部骨折の種類は様々あると前述しましたが、以下の5つに分けられます。

  • 大腿骨頸部骨折
  • 大腿骨頸基部骨折
  • 大腿骨転子部骨折
  • 大腿骨転子下骨折
  • 大腿骨頭骨折

大腿骨頸部骨折

大腿骨頸部骨折は低エネルギー外傷、つまり高齢者の転倒による受傷が多い骨折になります。

関節内の骨折で骨癒合は不良とされています。

大腿骨頸部骨折

大腿骨頸基部骨折

大腿骨頸基部骨折は低エネルギー外傷による受傷が多い骨折です。

頸基部骨折とは頸部骨折、転子部骨折のどちらにも分類できず、かつ骨折線が関節包内の内外に及ぶものとされています。

大腿骨頸基部骨折

大腿骨転子部骨折

大腿骨転子部骨折は低エネルギー外傷による受傷が多い骨折です。

関節外の骨折で、骨癒合は比較的良好とされています。

大腿骨転子部骨折
大腿骨転子部骨折のレントゲン評価で重要なポイントとは?

大腿骨転子部骨折

大腿骨転子下骨折

この骨折は高エネルギー外傷、つまり交通事故や高所での作業時に転落して受傷することの多い骨折です。高齢者では転倒によっても生じるときがあります。

関節外の骨折で、小転子下5cm までに骨折線が存在するものをいいます。骨癒合はやや不良とされています。

大腿骨転子下骨折

大腿骨頭骨折

この骨折も高エネルギー外傷による受傷が多い骨折です。

大腿骨頭の骨折なので関節内骨折になります。

大腿骨頭骨折

頸部骨折と転子部骨折の病態と合併症の違い

 

大腿骨頸部骨折と転子部骨折では以下の3つの観点で違いがあります。

  • 骨頭への血液供給
  • 関節包との位置
  • 合併症

骨頭への血液供給

大腿骨頭を栄養している動脈は内側大腿回旋動脈の分岐した血管です(下図参照)。

大腿回旋動脈
大腿回旋動脈(青印の後方が内側大腿回旋動脈、前方は外側大腿回旋動脈)

大腿骨頸部骨折では内側大腿回旋動脈が損傷されやすいので大腿骨頭への血液供給が不良になります。

すると大腿骨頭が壊死する大腿骨頭壊死症(LSC)を発症し、ますます予後が悪くなってしまいます。

対して、大腿骨転子部骨折では内側大腿回旋動脈が損傷されにくいので大腿骨頭への血液供給は良好な状態を保つことができます。

そのため、大腿骨転子部骨折のほうが予後は良好といわれています。

関節包との位置関係

大腿骨頸部骨折は関節包内の骨折です。関節包内は骨膜が存在していないので、仮骨が形成されないのです。

しかし、骨折時の出血は関節包内に貯留するので、出血は少ないことが特徴的です。

注意
仮骨が形成されない場合、骨折部を隙間なくプレート固定することで骨折端を直接、癒合することができます。しかし、癒合部は海綿骨化するので、長軸方向への力学的負荷には弱くなります。

対して、大腿骨転子部骨折は関節包外の骨折で骨膜は存在していますので、仮骨は十分に形成されます。

しかし、関節包外で、さらに海綿骨は血流が豊富なので出血量は多く、骨折部の腫脹や皮下出血を伴うことが特徴的です。

注意
海綿骨とは骨端や骨幹端に多く存在していて、網目状の構造をしています。対して皮質骨とは骨幹部の表層に多く存在していて、緻密な構造をしています。海綿骨は衝撃吸収に有利で、皮質骨は長軸方向への力学的負荷に有利とされています。

合併症

大腿骨頸部骨折は前述したように大腿骨頭への血液供給不良、仮骨形成不全になりやすいため、骨癒合が蔓延化してしまう恐れがあります。

また、大腿骨頭への血液供給不足の結果、大腿骨頭壊死症(LSC)、骨癒合が不十分なときに荷重や積極的な関節運動を行うことによる偽関節などの合併症を併発させてしまう恐れがあります。

大腿骨転子部骨折はしっかりと整復されていない場合に大腿骨頭の内反や後捻、頸部の短縮などの変形癒合を来してしまう恐れがあります。

これらの変形は中殿筋や外旋筋群をはじめとする股関節周囲筋の筋力発揮を妨げてしまい跛行の原因になります。

今日のリハゴリ俱楽部

  1. 大腿骨頸部骨折では大腿骨頭を栄養する内側大腿回旋動脈が損傷されやすい。
  2. 大腿骨頸部骨折では仮骨形成がされない。
  3. 大腿骨転子部骨折では整復不良によって変形癒合を来してしまう恐れがある。

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