正中神経麻痺とは?代表疾患や出現する症状とは?

正中神経は手にとって最も重要な神経で、正中神経の障害は、鋭い感覚と巧緻性を求められる手にとって致命的なダメージになります。

そこで今回は正中神経麻痺に関して、リハビリをする上で知っておく必要がある知識について記載していきたいと思います。

正中神経麻痺とは?

正中神経が外傷や圧迫、絞扼によって障害される末梢神経障害のことです。

上肢の末梢神経障害で代表的な疾患には、その他に尺骨神経麻痺、橈骨神経麻痺があります。

尺骨神経麻痺
尺骨神経麻痺とは?代表疾患や出現する症状とは?
正中神経麻痺
正中神経麻痺とは?代表疾患や出現する症状とは?

正中神経の解剖学

正中神経(C5〜Th1)の親元は腕神経叢(C5〜Th1)で、外側神経束と内側神経束の合流部から起こり、上腕の屈曲側(掌側)の真ん中を走行する神経です。

前腕部で円回内筋の筋間を貫通して前骨間神経(運動枝)が分岐します。前骨間神経は深指屈筋や長母指屈筋、方形回内筋を支配しています。

その遠位部では掌枝(感覚枝)が分岐して、分岐しない神経は手根管内を通過していき、母指球筋へ反回枝(母指球筋筋枝)を出して、固有掌側指神経(感覚枝)へ移行して終わります。

感覚枝である掌枝と固有掌側指神経は手掌面の母指から環指橈側にかけてと手背面の橈側末節・中節の皮膚に分布し、感覚を司ります。

正中神経

正中神経

正中神経麻痺の代表疾患とは?

正中神経麻痺を患う代表的な疾患は以下の3つになります。

  • 手根管症候群(正中神経低位麻痺)
  • 前骨間神経麻痺
  • 回内筋症候群(正中神経高位麻痺)

手根管症候群とは?

手根管症候群とは手根管の絞扼によって正中神経が圧迫される疾患のことです。

手根管症候群

手根管とは手根骨と屈筋支帯の間にある間隙のことで、正中神経、長母指屈筋腱、示指から小指の浅・深指屈筋腱(8本)が通っています。

手根管

同じ正中神経支配の筋でも手根管症候群によって障害される筋は手根管を通過してからシナプスを介して支配される筋なので、母指対立筋や短母指外転筋、短母指屈筋などが障害されます。

そのため、母指球筋が萎縮し、母指の対立運動が困難になる猿手を呈してしまいます

猿手とは?
母指球筋の萎縮によって母指が屈曲および外転困難となり示指側へ偏位してしまう状態のこと。

猿手

感覚障害では手根管絞扼部より近位で分岐する掌枝は絞扼されないので、掌枝の感覚支配領域は正常を示します。

つまり、手根管症候群では固有掌側指神経の支配領域のみ感覚異常を示すことになります

手根管症候群

前骨間神経麻痺とは?

前骨間神経麻痺とは、純粋な運動枝である前骨間神経が主に浅指屈筋によって圧迫されてしまう疾患のことです。

前骨間神経麻痺

前骨間神経支配である長母指屈筋や深指屈筋(示指)、方形回内筋に障害が生じるため、母指 IP 関節の屈曲、示指 DIP 関節の屈曲が困難になります。

このように母指 IP 関節、示指 DIP 関節の屈曲が困難になると母指と示指で、きれいな丸を作れなくなります( perfect O の不整)。

前骨間神経麻痺患者では、こぼれ落ちた涙のような形になってしまうことから tear drop sign と呼ばれています。

perfect O, tear drop

感覚障害ですが、前骨間神経は純粋な運動枝なので感覚障害は出現しません

円回内筋症候群とは?

 

円回内筋症候群とは、その名の通り円回内筋によって正中神経が圧迫されてしまう疾患のことです。

円回内筋症候群

正中神経は前腕部で円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通っています。

そのため、円回内筋の筋緊張が亢進してしまうと、下図の貫通部(赤丸印で囲ってるところ)で正中神経が板挟み状に絞扼されてしまうのです。

円回内筋症候群
右前腕を内側から見た図(左:遠位 右:近位)

この円回内筋症候群ですが、正中神経麻痺の疾患のなかで最も近位で圧迫してしまう疾患なので、その障害は前骨間神経や反回枝にまで広範囲に及びます。

そのため、手根管症候群のように母指球筋の萎縮によって猿手を示しますし、示指や母指の屈曲が困難になり、tear drop sign も示します。

このような円回内筋症候群は祝祷肢位(誓いの手)という特徴的な肢位を示します。

これはこぶしを握ろうしたときに環指と小指しか屈曲しないために生じる現象です(下図参照)。

祝祷肢位

感覚障害は固有掌側指神経領域と掌枝領域に出現します

正中神経

今日のリハゴリ俱楽部

  1. 手根管症候群では固有掌側指神経のみ感覚異常を呈する。
  2. 前骨間神経麻痺では感覚は障害されない。
  3. 回内筋症候群では前骨間神経をはじめ掌枝や反回枝と広範囲に障害される。

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