【慢性硬膜下血腫のリハビリ知識】発症機序・症状・特徴的な画像所見について

今回は高齢者に多い慢性硬膜下血腫について記載していきたいと思います。

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慢性硬膜下血腫とは?

慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma)とは軽度な頭部外傷をきっかけにしばらくしてから硬膜とクモ膜の間に血腫が緩徐に溜まっていく疾患のことです。

この血腫が脳を圧迫することで様々な症状が出現します。

また、アルコールをよく飲む人や高齢者に多く、受傷後3週以降(多くは3ヶ月頃)に発症しますが、頭部外傷の記憶がないことが多いです。

慢性硬膜下血腫

硬膜下とはどこの部分?

硬膜下とは硬膜とクモ膜の間のことを指しています。ここの空間のことを硬膜下腔ともいいます。

硬膜

慢性硬膜下血腫の発症機序とは?

軽度な頭部外傷を起こすと、硬膜下に出血が生じます。それと同時に被膜(内膜と外膜)が作られますが、その機序については未だ不明とのことです。

被膜のうち肉芽組織である外膜は血管が豊富に存在しているので、簡単に出血してしまいます。

そのため、一度出血して被膜が形成されると何度も繰り返し出血してしまうので血腫が徐々に大きくなってしまうのです。

 

このように出血部が凝固せず、むしろ日に日に血腫が大きくなるので受傷から遅れて症状が出現するのです。

慢性硬膜下血腫の症状とは?

慢性硬膜下血腫では前述した機序で頭蓋内の血腫が増大するにつれて様々な症状が出現してきます。

主な症状としては以下の通り、正常圧水頭症(NPH)の3大症状と類似しています。

  • 精神症状(認知症)
  • 尿失禁
  • 片麻痺 など

精神症状(認知症)

血腫が大脳皮質の側頭葉を圧迫すれば記憶障害を主とする認知症が出現します。

記憶は記銘・保持・想起で構成されています。記銘とは「学習して覚える」ことで、保持は「記憶として蓄える」こと、想起は「思い出す」ことです。

記銘や保持の一部は海馬がその役割を担っていて、保持の一部と想起は大脳皮質の側頭葉が担っています。

血腫が大脳皮質の側頭葉を圧迫してしまうと、記憶障害の中でも特に保持や想起が障害されることになります。

記憶障害

尿失禁

大脳皮質の排尿中枢や脳幹(PMC:橋排尿中枢)を圧迫すれば尿失禁が出現します。

PMC の役割
PMC の抑制が外れると仙髄オヌフ核を抑制するよう信号を出します。仙髄オヌフ核は外尿道括約筋を支配する陰部神経の働きを司っていますので、仙髄オヌフ核が抑制されると陰部神経も抑制され外尿道括約筋が弛緩してしまいます。外尿道括約筋は排尿時に弛緩しますので、PMC の抑制が外れることは外尿道括約筋を弛緩させ排尿を促すように働きかけることになります。

膀胱内の尿量が増え、膀胱壁が伸展すると膀胱壁の伸展受容器が胸腰髄交感神経、仙髄オヌフ核を興奮させます。これにより膀胱内に尿が蓄えられます(蓄尿反射)。

また、膀胱壁の伸展受容器からの刺激は大脳皮質や PMC(橋排尿中枢)にも届けられ、尿意を感じますが、大脳皮質が PMC を抑制するために排尿は生じないようになっています。

このため、大脳皮質の排尿中枢が障害を受けると PMC を抑制できないため、尿失禁してしまうのです。

同じように PMC が障害を受けると抑制することができないので、排尿反射が生じてしまい、これもまた尿失禁してしまいます。

尿失禁

片麻痺

大脳皮質の運動野や錐体路の通過部位を圧迫すれば片麻痺が出現します。

片麻痺は錐体路障害によって出現する特徴的な症状です。そのため、錐体路の通過する部位が圧迫されると片麻痺が出現することになります。

この錐体路系は以下の3つからなります。

  • 外側皮質脊髄路
  • 前皮質脊髄路
  • 皮質延髄路(皮質核路)

外側皮質脊髄路は延髄で交叉する経路で、障害されると弛緩性麻痺を呈します。

外側皮質脊髄路

前皮質脊髄路は延髄で交叉しない経路で、こちらも障害されると弛緩性麻痺を呈します。

前皮質脊髄路

皮質延髄路(皮質核路)は脳幹に投射する経路で、脊髄まではいかず延髄で終わります。役割として、眼球運動や顔面運動、嚥下運動を司ります。

皮質核路

硬膜下血腫の画像所見とは?

硬膜下血腫の画像所見では、下記のような特徴があります。

  • 三日月型血腫
  • midline shift(正中偏位)
  • 側脳室の狭小化

慢性硬膜下血腫

血腫により脳内を圧迫することで脳の正中ラインが対側へシフトしたり、側脳室を圧迫することで側脳室が狭小化したりします。

ただし、これらの所見はリハビリにそこまで重要ではありません。というのも、血腫が手術によって除去されると上記の所見は基本的に回復してくるため、リハビリを行うときには元に戻っていることが多いからです。

 

では、硬膜下血腫(特に急性硬膜下血腫)の画像所見で一番見落としがちな重要な所見といいますと、「対側の脳損傷の有無」です。

これは contrecoup injury(コントラクー・インジャリー:対側損傷)ともいわれますが、頭部を衝突したとき脳が外傷部に移動することにより頭蓋内圧に陰圧が生じます。

この陰圧により引っ張られて対側の脳実質や血管が損傷を受けることをいいます。

硬膜下血腫

contrecoup injury が認められた場合、対側の方が損傷程度が大きいといわれています。

また、contrecoup injury の場合、血腫を除去しても回復しないことが多いため、硬膜下血腫の画像所見では「contrecoup injury の有無」を評価することがとても重要なのです。

慢性硬膜下血腫の予後と治療法とは?

 

慢性硬膜下血腫の治療は穿頭ドレナージ術を行って血腫の排液・洗浄を行います。

穿頭ドレナージ術とはドレーンを出血部位に留置して、緩やかに頭外へ排液していく方法のことです。また最近では漢方薬(五苓散など)による治療も有効であると報告されています。

 

慢性硬膜下血腫では上記のように血腫内容物を除去すれば症状は改善していきます。

今日のリハゴリ俱楽部

  1. 慢性硬膜下血腫の症状で多いのは認知症・尿失禁・片麻痺である。
  2. 硬膜下血腫の画像所見で重要なのは「contrecoup injury」の有無。
  3. 血腫内容物を除去さえすれば、症状は改善していく。

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